高額療養費は、1か月の医療費の自己負担に上限をかける公的な仕組みです。入院しても青天井にはなりません。会社員にとっては「民間の医療保険にいくら払うべきか」を決める土台になります。
ただし2026年8月、この上限が引き上げられました。年収約370万〜770万円の会社員なら、月の上限は80,100円から85,800円へ。さらに2027年8月にも改正が控えています。
私も自分の区分を調べるまで、上限額を1万円ほど低く思い込んでいました。給与明細を見れば5分で分かります。
この記事でわかること

- 高額療養費で自分の上限額を給与明細から調べる方法
- 2026年8月改正で上がった金額の実額
- 新設された「年間上限」の中身
- 窓口で立て替えずに済ませる手続き
- 医療費控除・傷病手当金との関係
- 2027年8月にさらに変わること
- よくある質問6問
まず動画で全体像をつかむ
制度の仕組みをアニメで解説した動画があります。数字の話に入る前に、8分で骨格をつかんでおくと読みやすくなります。
自分の区分は給与明細で分かります
高額療養費の上限額は、収入によって5段階に分かれます。会社員が見るべきは年収ではなく標準報酬月額です。
標準報酬月額は、給与明細の健康保険料の欄か、毎年届く「ねんきん定期便」で確認できます。4〜6月の給与をもとに毎年決まる金額。
| 区分 | 標準報酬月額 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| ア | 83万円以上 | 約1,160万円〜 |
| イ | 53〜79万円 | 約770〜1,160万円 |
| ウ | 28〜50万円 | 約370〜770万円 |
| エ | 26万円以下 | 〜約370万円 |
| オ | 住民税非課税世帯 |
(出典: 厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」確認日: 2026-08-17)
多くの会社員がウ区分に入ります。年収400万円台なら、まずここだと思ってください。
2026年8月改正でいくら上がったのか
2026年8月から、月の自己負担上限が引き上げられました。改正前後を並べます。
| 区分 | 改正前 | 2026年8月〜 | 多数回該当 |
|---|---|---|---|
| ア | 252,600円+1% | 270,300円+1% | 140,100円 |
| イ | 167,400円+1% | 179,100円+1% | 93,000円 |
| ウ | 80,100円+1% | 85,800円+1% | 44,400円 |
| エ | 57,600円 | 61,500円 | 44,400円 |
| オ(非課税) | 35,400円 | 36,900円 | 24,600円 |
(出典: 厚生労働省 同上 確認日: 2026-08-17)
「+1%」は、医療費が一定額を超えた分の1%を上乗せする計算です。ウ区分なら、医療費が286,000円を超えた部分の1%が加算されます。
ウ区分の会社員が100万円の医療費を使った場合、上限は85,800円+(100万円-28.6万円)×1%=92,940円です。窓口で30万円払っていても、超過分は戻ります。
多数回該当も押さえてください。直近12か月で3回以上上限に達すると、4回目からは上限が下がります。ウ区分なら44,400円。長期治療での負担を抑える仕組みです。
【2026年8月 新設】年間上限ができました
今回の改正でいちばん大きい変更がこれです。従来は「月ごと」の上限しかありませんでした。
月の上限に届かない金額を毎月払い続ける人は、年間では相当な額になっても救済されない。その穴を埋めるのが年間上限です。8月から翌年7月までの1年間で集計します。
| 区分 | 年間上限額 |
|---|---|
| ア | 1,680,000円 |
| イ | 1,110,000円 |
| ウ・エ | 530,000円 |
| オ(非課税) | 290,000円 |
(出典: 厚生労働省 同上 確認日: 2026-08-17)
通院を続けている方ほど効いてくる改正。心当たりがあれば、加入している健康保険組合か協会けんぽに相談してください。
窓口で立て替えないための手続き

高額療養費は、何もしなければ「いったん3割を払って、あとで払い戻し」になります。数か月かかることも珍しくありません。
先に手続きをすれば、窓口の支払いを最初から上限額までに抑えられます。方法は2つ。
ひとつはマイナ保険証の利用です。医療機関の窓口で情報提供に同意すれば、限度額の情報が連携され、認定証がなくても上限までの支払いで済みます。
もうひとつが限度額適用認定証の事前申請。加入している健康保険に申請して交付を受け、窓口で提示します。マイナ保険証を使わない場合はこちらです。
入院が決まったら、その日のうちに動いてください。後から遡って使うことはできません。
医療費控除・傷病手当金との関係
会社員のお金の話として、他の制度との関係も整理しておきます。
医療費控除との関係。高額療養費で払い戻された分は、医療費控除の対象になりません。控除の計算では、実際に自己負担した金額から払い戻し分を差し引きます。二重取りはできない設計です。確定申告の手順は副業の確定申告やり方完全ガイドで解説しています。
傷病手当金との関係。高額療養費が「出ていくお金」を抑える制度なのに対し、傷病手当金は「入ってこなくなる給料」を補う制度です。役割が違うため併用できます。長期療養では両方が効きます。
民間の医療保険は必要か。上限が月85,800円と分かれば、判断の土台ができます。差額ベッド代や先進医療費は高額療養費の対象外なので、そこをどう考えるかが分かれ目。金額を知らずに入るのがいちばん損です。
2027年8月にさらに変わります
改正は2段階です。2027年8月には、所得区分がさらに細かく分かれます。
ウ区分を例にすると、いまは約370〜770万円でひとくくり。これが3つに分かれます。
| 年収の目安 | 2027年8月〜の月額上限 |
|---|---|
| 約370〜510万円 | 85,800円+1%(据え置き) |
| 約510〜650万円 | 98,100円+1% |
| 約650〜770万円 | 110,400円+1% |
(出典: 厚生労働省 同上 確認日: 2026-08-17)
収入が多い人ほど多く負担する形への移行です。一方で、年収約200万円未満の層は多数回該当が44,400円から34,500円へ引き下げられ、年間上限も41万円が適用されます。
昇給で区分が上がると上限も上がります。転職や昇進のタイミングで、一度は確認しておいてください。
人口構造の変化と社会保障の関係については2040年問題に投資で備える方法にまとめました。あわせて税金・節税の記事一覧もどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自分がどの区分か分からないときはどうすればよいですか?
給与明細の健康保険料欄か、ねんきん定期便で標準報酬月額を確認してください。加入している健康保険組合や協会けんぽに問い合わせても教えてもらえます。
Q2. 入院時の食事代や差額ベッド代も対象になりますか?
なりません。入院時の食事代(食事療養標準負担額)、差額ベッド代、先進医療にかかる費用は高額療養費の算定対象外です。全額が自己負担になります。
Q3. 月をまたいで入院した場合はどう計算しますか?
暦月(1日から末日まで)ごとに計算します。3月15日から4月10日までの入院なら、3月分と4月分に分けてそれぞれ上限を判定します。月をまたぐと不利になりやすい点に注意してください。
Q4. 共働きの夫婦で医療費を合算できますか?
それぞれが被保険者として別の健康保険に入っている場合は合算できません。世帯合算は同じ健康保険の被保険者とその被扶養者の間で行われます。
Q5. 申請を忘れていた分は後から請求できますか?
できます。診療を受けた月の翌月1日から2年間が時効です。加入している健康保険に問い合わせてください。
Q6. 年間上限はいつからいつまでで集計しますか?
8月から翌年7月までの1年間です。2026年8月に新設されました。月の上限には届かないものの、通院を続けている方が対象になります。
まとめ
要点を3つに絞ります。
まず自分の区分を確認してください。会社員の多くはウ区分で、2026年8月から月の上限は85,800円+1%です。給与明細の標準報酬月額で5分で分かります。
入院が決まったらマイナ保険証か限度額適用認定証を用意する。手続きをすれば窓口で立て替えずに済みます。後追いでは使えません。
2026年8月に年間上限が新設されました。ウ・エ区分なら53万円。通院を続けている方は必ず確認してください。
公的保険でここまで守られていると分かると、民間保険をいくらかけるかの判断も変わってきます。まずは上限額を知ることから。
参考情報源
- 厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」(確認日: 2026-08-17): https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001661792.pdf
- 厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(確認日: 2026-08-17): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)高額な医療費を支払ったとき(確認日: 2026-08-17): https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/
※本記事は制度の解説を目的とした情報提供です。実際の給付額や手続きは、加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村により取扱いが異なる場合があります。個別のご相談は加入先の保険者にご確認ください。制度内容は今後の法令等により変更される場合があります。
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